成田空港で働き、空港周辺に暮らす

成田国際空港株式会社(以下、NAA)では「空港で働き、住む」を目的とした、将来の担い手となる若者に体験してもらう『エアポートライフツーリズム モニターツアー』を2024年11月30日、12月1日の2日間で開催しました。ツアーを主催するNAAの渡辺さんにモニターツアーの目的や内容について、話を伺いました。
エアポートライフツーリズムとは
“エアポートライフツーリズム”とは「成田空港で働き、空港周辺に暮らす」というNAAが提唱するライフスタイルを表しています。
将来の担い手である学生たちに、成田空港での仕事や空港周辺地域での暮らしの魅力を紹介することで、空港の人材不足への対応や雇用の確保、新規職員の移住・定住による成田空港周辺地域の活性化を目指しています。
ツアー内容は大学生、地元住民、成田空港職員等を交えて行われた2回のワークショップでの意見をもとに磨き上げ、当日は企画段階から本件に携わっている5名と初参加となる7名の計12名の大学生が参加し、エアポートライフツーリズムを通じて『空港で働く』『空港周辺エリアで暮らす』の両側面を体験してもらいました。

空港と周辺地域が協力し、新たなライフスタイルを創出
新たなライフスタイルの体験とは
今回のモニターツアーは、「成田空港で働き、空港周辺に暮らす」ライフスタイルを提案することが目的となっています。ツアーを通して将来を担う世代の皆様から率直な感想を伺い、空港で働くこと・周辺地域に暮らすことの魅力の発掘につなげてい
くことを目指したものです。
『空港で働く』コンテンツでは、グランドハンドリングに焦点を当て、成田空港のグラハンの働き方の定番である“四勤二休(早番早番・遅番遅番)”のシフト制について、早番・遅番の切り替わりとなる1泊2日を体験してもらいました。『空港周辺で暮らす』コンテンツでは、空港の敷地のベースとなった皇室の御料牧場の歴史や文化が残り、多くの空港従業員が暮らす“三里塚”エリアでの暮らし体験をしてもらいました。
三里塚エリアとは
成田空港の西側に隣接する三里塚エリアは「空港に一番近いベッドタウン」として存在してきた歴史のある地域です。成田市の中でも3番目に人口が多い市街地で約15,000人が居住し、空港従業員も多く住むエリアです。成田空港が建設される前には宮内庁の直轄である御料牧場を中心に観光地として賑わい、商店や宿場など商業施設も発展していきました。
現在このエリアは国内外から移住者が増えており、国際色豊かな飲食店も立ち並んでいます。

地域振興の新たな取り組み
成田空港の更なる機能強化や地域振興のとりまとめ、自治体や地域と連携した施策の推進を担当しているNAAの石川さんにもお話をお伺いしました。
新たな取り組みとは
今回のツアーにおいて地域側の体験を提供するにあたり、地域の事業者や地元の方との窓口として、関係者と連携、協力しながら地域における宿泊・飲食・体験プログラムの造成などに携わらせていただきました。
三里塚は、空港に隣接し、空港従業員が多く住むエリアで、歴史的な経緯や背景もあり、特に空港との関係性が深い地域の一つです。そのため、従来から社員が、まちのお祭りに参加したり、飲食店に通ったりと地元の方々との交流を重ねてきた歴史がありますが、今回のように地域と空港が連携して、学生を受け入れる取り組みははじめての試みでした。今回のツアーでは、地区の役員の皆様のご理解とご協力のもと、まちの商店や事業者などが中心となって、学生らの受け入れをいただきましたが、地元の方も当たり前になっていて気が付きにくいまちの魅力を、学生視点で改めて見てもらい、意見をもらうことで、様々な気付きが得られ、新たなまちの魅力の再発見にも繋がったのではないかと思います。

三里塚エリアについて学び、地域と触れ合う
さらにツアーの具体的な内容について、NAA渡辺さんに伺いました。
どのようなツアーでしょうか
ツアー参加を通じて空港や周辺地域について知ってもらうことも目的の一つでした。
離着陸する飛行機が間近に見えることで有名な桜の名所「さくらの山」という展望公園の散策から、トゥクトゥクで移動し、昔の風景と建物が残る「三里塚御料牧場記念館」へ向かいました。明治の初めから畜産振興のパイオニアとして足跡を残してきた牧場の名を残すため建設された記念館です。
記念館を後にして向かったのは、「戸村商店」の落花生工場。収穫されてから加工し焙煎される工程を見学し、食べ比べなども体験してもらいました。
その後、国際色豊かな飲食・物販店や実際の生活では欠かせないローカルスーパーへの立ち寄りでは、地元のリアルな生活を垣間見ることができ、周辺に暮らすということが、参加した学生たちの印象にも残ったようです。
三里塚というエリアの魅力とは
1日目の夕食は「野沢羊肉店」で、地域の方とともにジンギスカン鍋を囲みながらの交流会となりました。
諸説あるようですが、かつてあった御料牧場の前身が牧羊場発祥の地というルーツを持ち、早くから地域で羊肉料理が食べられていたことから、ジンギスカンは三里塚が発祥とする説もあるほど、ご当地グルメとして現在まで地域で愛されている食文化です。
また、2日目には、都内から三里塚に移住し、航空写真家として活躍されている、チャーリィ古庄氏から成田空港の知られざる姿や移住者目線での暮らしの魅力について語っていただきました。
なお、桜と馬の牧場として、長い間多くの人々に親しまれてきた旧宮内庁下総御料牧場は、空港の建設にともない惜しまれながら栃木県塩谷郡高根沢町に移転します。
歴史と発展の両面を併せ持つのが三里塚エリアの特徴であり魅力です。

国際空港で働くという体験とは
翌日の朝は、航空科学博物館で飛行機をみながら、ブュッフェ形式の地産地消食材で朝食を食べ、朝活のピラティスを体験しました。
空港の業務では、早番と遅番のシフト制が多くあります。シフト制ならではの時間の使い方として、遅番の時には、出勤前の朝の時間をゆったりと朝活に充て、充実したワークライフバランスを送ることもできます。
今回はこのような空港の特徴的な働き方でもあるシフト勤務をイメージしていただきながら、『空港で働く』疑似体験をしていただこうというのが狙いの一つでした。
また、実は今回ピラティス講師の傍ら成田空港でも働いている方に協力をいただいたのですが、体験の前後でご自身のライフスタイルの話も交えていただいたことで、参加した大学生からは、働き方次第では自身にあった充実したワークライフバランスが実現できるということもイメージしてもらえたのではないかと思います。

成田空港の一般立ち入り禁止エリアにも潜入
1日目のランプハンドリング体験では「JALグランドサービス」協力のもと、搭降載業務見学、プッシュバック(トーイングカー同乗体験)、出発機のお見送り体験などを体験しました。
2日目のランプハンドリング体験では、「ANA成田エアポートサービス」協力のもと、FLYING HONU到着便見学、手荷物搬送(トーイングタグ車助手席)、などを体験し、旅客ハンドリングでは「JALスカイ」協力のもと、チェックインカウンター業務体験、ラウンジ見学、ゲートでのアナウンス体験などをしました。
お仕事体験を通し、空港で働く際のやりがいなどを肌で感じてもらうことができたと感じています。例えば、実際の業務では、飛行機をお見送りする際にお客様へ手を振ることがありますが、飛行機好きで飛行機の中から手を振っていた学生からは、今回のグランドハンドリングの体験で、お客様へ手を振る側になれて感動的だったという感想も多くもらいました。
また、グランドハンドリングという名前は聞いていたり、旅行者目線で業務の一部を見ていたりしたことはありつつも、具体的な仕事内容を知らなかった学生からは、仕事体験をしたことで、興味が湧いたという声ももらいました。学生からの声を踏まえると、まだまだ知られてない、ランプハンドリングや旅客ハンドリングの仕事の魅力を、積極的に訴求していく必要があると感じました。
ツアー参加した学生たちからその他の声は
今回ツアーに参加してもらったのは、「跡見学園女子大学」と、「SKY AVIATION」という学生団体の学生ら14名。
モニターツアー後の意見交換では、みんなでツアーの写真を見返しながら参加した学生からの感想などをアウトプットしてもらい、地域の人からの声もいただきました。
三里塚で、ジンギスカンを食しながら地元に深く関われたことがとても印象に残ったという感想も聞こえてきました。他にも、ジンギスカンは苦手だったけど好きになったという声や、仕事体験をする中で空港の近くに住んで働くという一貫したイメージが持てたなど、前向きな声をたくさん聞く事が出来ました。
「空が好きで今回の企画に参加したが、ツアーを通して地元の方がよそ者の自分を地元民のように温かく受け入れてくれたのが嬉しかった」(学生団体 SKY AVIATIONの吉留理久友さん(国際基督教大学)
「今回のツアーで初めてグランドハンドリングという職業を知った。グラハンとして勤務している皆さんのお陰で空港の仕事は成り立っていると分かった」(跡見学園女子大学の千野心優さん)
「企画段階からツアーに携わることができたのは貴重な体験だった。私にとって成田がまた戻ってきたいと思える場所になった」(同大学・浅井祐佳里さん)
”第二のふるさと、成田”を目指して
企画から携わった学生たちの意見から
地域と学生との接点として、7月末に開催されたお祭りに参加してもらったことからスタートしました。空港と地域の見学という形で見学会を行い、翌月から2回にわたりモニターツアーの企画をワークショップという形で検討しました。
ワークショップでは、移住者目線で航空写真家のチャーリィ古庄さんにも話をお伺いしたり、周辺地域のまだ知られていない魅力を再発見するべく地域の方とも協力し、ワークショップの中からでてきた意見を元にツアーを企画しました。
第二のふるさと、成田とは
成田空港で働く人の中には、地方から移住して来られる方も多くいます。また「成田空港が好きだから」という理由で「成田空港を起点としたつながり」を求めてくる方もいます。いろんな方に知ってもらい、来てもらい、遊んでもらう中で、空港を中心とした関係人口を創出していきたいと思っています。その関係性のなかから、「第二のふるさと」という意識の醸成を目指していきたいと思っています。

”よそ者視点”からみた成田や、空港周辺における魅力とは何か
今回のツアー開催にあたり、取材協力された日本唯一のロケ地情報誌「LocationJapan」編集部のある(※)「株式会社地域活性プランニング」は、“日本のふるさとを世界へ”を志とし、各地域の活性化に貢献しています。「その地域にしかない魅力」、「人それぞれが持つその人の強み」を理解していくことが必要ですが、「本当の強み」を見つける為には、『よそ者・若者・ばか者』の三者が必要不可欠だとしています。
「よそ者」として、客観的視点から各地域の「強み」をメディアの立場から発見するお手伝いをする「LocationJapan」編集部の中田さんから、取材を通して「よそ者視点」でみた、三里塚エリアや成田空港周辺における魅力を語ってもらいました。
「よそ者視点」でみた成田空港と周辺地域の魅力とは
三里塚エリアには親しみやすさや人を迎え入れる力があると感じます。
取材を通し、参加した学生からも、「よそ者である自分を受け入れてくれて嬉しかった」という感想が聞こえてきました。住民間の横の繋がりや助け合いなど、人の温かさが魅力の一つだと思います。
もう一つの魅力はやはり日本の空の玄関口がすぐ隣にあるという利便性です。国際空港が近くにあるからこそ、旅行客が一番初めに降り立つ場所であり、すぐ旅立てる場所でありますよね。空港に隣接した地域ならではの多くの国内外の移住者を迎え入れてくれる寛容さは強みだと思っています。「迎え入れてくれる時の、優しさみたいなもの」を感じるのは、地域の方の温かさなどから受けとる空気感なのかもしれません。
また三里塚から富里市方面にかけては、韓国やタイ、ベトナム、スリランカなどの国際色ゆたかなお店があり、国際色を感じる多文化が共生するまちでもあります。最近ではハラル食材のお店も増えているようで、日本の地域性の良さもありながら多文化共生があり、それらが融合していることが地域の魅力として映っています。
「LocationJapan」編集部では、「三里塚探索MAP」も取材・作成しました。今回のツアーで巡った場所や、地元の方がおすすめするスポットなどを紹介しています。また三里塚エリアでは映画やドラマ、MVの撮影場所もあるためロケ地の紹介もしています。このMAPは、空港内外の施設にて配布しておりますので、見つけた際にはぜひ手にとってみてください。

周辺地域と空港が織りなす、エアポートライフツーリズム
最後に、NAAの渡辺さんに今後の展望を伺いました。
今後の展望はありますか
今回の二日間にわたったモニターツアーですが、参加した学生などの声を踏まえて、今後の然るべきツアーの形を考えていきます。
今後のツアーも学生や地域の方などとともに魅力的な内容になるようブラッシュアップしていきたいと思います。
■イベント主催
成田国際空港株式会社
■ツアー催行
株式会社グリーンポート・エージェンシー
https://nrttour.gpa-travel.jp/
■取材協力
株式会社地域活性プランニング
https://locationjapan.net/
■本イベントへのお問い合わせ
成田国際空港株式会社
経営企画部門
経営計画部 戦略企画室
TEL:0476-34-4771